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「賞与の月給化」その落し穴(2)

賞与月給化には、見落とされがちな人件費の増加要因があります。年収は変えていないのに、なぜ人件費が上がるのか。 その理由は、賞与を月給に組み込むことで残業代の計算が変わる点にあります。

賞与は、残業代の基礎には含まれません。この性質が、月給化したときに人件費が変動する大きな要因になります。

たとえば賞与60万円を月給に組み替え、月給を30万円から35万円に見直した場合、時間単価が上昇し、割増単価も自動的に上がります。実際、割増単価は1時間あたり約400円上がり、月30時間の残業がある従業員では年間約15万円の増加となります。これが100人規模になれば、年間で1,500万円に達する計算です。年収は同じつもりでも、残業がある企業では人件費が着実に積み上がるのです。

固定残業代を採用している企業では、さらに注意が必要です。固定残業代は「割増単価×固定残業時間」で算出されるため、残業の有無にかかわらず、月給が上がれば必ず支給額も増えます。しかも、たとえ今後、残業時間を削減したとしても、この固定費は下がりません。

「賞与の月給化」は、こうした増えるコストも踏まえて制度を検討することが欠かせません。