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「賞与の月給化」その落し穴(1)

賞与の月給化は、求人上の見栄えや収入の安定性が評価され、とくに大企業を中心に導入の動きが広がっています。その影響を受けて中小企業でも関心が高まりつつありますが、同じように踏み出してよいかとなると、慎重な判断が欠かせません。

賞与を月給に組み込むことは、変動部分を固定費へ転換する大きな制度変更です。導入当初は月給増に満足感が得られても、その印象は意外と早く薄れ、数年後には「周囲の会社は賞与があるのに」という声が出る可能性があります。「賞与の月給化」で膨らんだ月給(固定費)に対し、賞与(変動費)の復活を求められる、ということがないとは言い切れません。そうすると企業側としては本来想定していなかった負荷が発生しかねません。

また、大企業では標準報酬月額の上限超過により社会保険料が軽減されるといった副次的メリットが生じる場合がありますが、中小企業ではその恩恵は基本的に期待できず、制度変更によるメリットは限定的です。

そして、賞与月給化がもたらす最大級の落し穴が「残業代の上昇」です。次回の記事で詳しく取り上げます。