越境M&Aで見落としがちな最低賃金リスク(3)
県ごとに最低賃金の発効時期が異なる結果、企業価値の算定でも注意が必要となります。
過去データのみを基に企業価値を算定した場合、未来の最低賃金引上げが反映されていません。「12月だからもう最低賃金対応済みの人件費だと思っていたら、●●県は発効がこれからにつき、まだ対応前であった」ということが起こりえるわけです。買収後に想定外の人件費増として表面化し、EBITDAが低下する可能性があります。
さらに、PMIにも影響が出ます。同じ企業でも、各拠点で発効日がバラバラとなるため、人件費計画、システム調整の負担が増えます。これまで以上に、発効タイミングを考慮したPMIが必要になります。
(1)から、今回の記事である(3)まででみてきたM&Aで確認しておくべきポイントをまとめると、次のとおりです。
・都道府県ごとの発効日、引上げ額
・賃金台帳に表れない未発効県の将来コスト
・社会保険・雇用保険、割増賃金への波及
・PMI工程への反映
当社では、最低賃金の発効時期や未発効県の負担見込みを含め、労務DDの一環として確認することを基本としています。企業価値に影響する要素は、可能な範囲で丁寧に可視化し、必要な対策があれば具体的に提案させていただくよう努めています。
越境M&Aでは、最低賃金に関する「見えない人件費」が企業価値を揺らす原因になります。発効日の把握と将来コストの見極めが、これまで以上に重要になると考えます。



