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退職金は何のための制度なのか

社労士として企業の制度設計に関わっていると、退職金制度を新設したいという相談を受けることがあります。長く勤めた人に報いる仕組みをつくりたい、という経営者の思いからです。

一方で、制度導入の検討過程や社内説明の場面では、「その原資があるのであれば賃上げしてほしい」という声が出ることもあります。会社としては将来に向けた制度を整えたつもりでも、従業員にとっては、会社には処遇に回せる余力がある、というメッセージとして受け取られることがあるためです。退職金制度の導入が、必ずしもそのまま前向きに受け止められるとは限らない場面もあります。

ここで改めて考えたいのは、その制度で何を実現したいのかという点です。

退職時に「こんなにもらえるとは思わなかった、ありがとうございます」と言われた、という話を聞くことがあります。しかし、その言葉自体を制度の目的にするのは少し違うようにも思います。制度は、本来、在職中の行動や選択に影響を与えることを前提として設計されるものだからです。

では、退職金制度を通じて会社は何につなげたいのでしょうか。長期勤続なのか、離職防止なのか、日々の仕事へのモチベーションなのか、それとも採用における魅力なのか。

もし長期勤続や離職防止が目的であれば、制度を設計する段階でそこに合わせた条件を考える必要があります。たとえば勤続10年以上を条件とすることも真剣に検討してよいでしょう。逆に、勤続1年以上で自己都合退職でも支給という設計では、制度と目的は必ずしも一致しません。

極端なことを言えば、定年退職者にのみ支給するという制度であっても構いません。その方がむしろ、会社が何を大切にしているのかは明確に伝わるかもしれません。

制度とは、会社の考え方を示すものです。何を目的としているのか。そして、その目的と制度の設計が本当に合っているのか。制度を作るときには、そこを一度考えてみてもよいのではないかと思います。