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IPO準備の段階で、就業規則に書きすぎないという選択

就業規則と雇用契約は、似ているようで時間軸がまったく違います。就業規則は、いま在籍している人だけでなく、将来入社してくる人に対する約束でもあります。一方、雇用契約は、いま目の前にいるその人との約束にとどまります。

組織もまだ発展途上で、職務や役割がこれから変わる可能性がある中では、関係に応じて更新し直せる雇用契約の方が、実務的には圧倒的に扱いやすいはずです。

とはいえ、実際には説明責任への不安から、就業規則に書いておいた方がよいのでは、と思われがちなことも少なくありません。Aさんに職務手当・調整手当を支給した場合、Bさんにも支給しなければならないのではないか、という不安がその典型です。しかし、Aさんの雇用契約に職務手当・調整手当を明記し、Bさんの雇用契約には明記しないのであれば、少なくとも契約関係としては整理がつきます。

就業規則に書いた瞬間、それは「いまいる全員」に加えて、「これから入ってくる人」に対する約束にもなります。全員に、さらに将来の社員にまで約束しきれない内容を先に決めてしまうと、あとから会社の足かせになります。

就業規則は未来への約束、雇用契約は現在の約束。まずは、目の前の人との約束に限定して考える方が、組織をこれから作っていく段階では、会社にとって一番スムーズなのだと思います。就業規則に何を書くか以上に、何を書かないかを決めることが、発展途上の組織では重要です。