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退職金は退職の制度なのか

社労士として実務に関わっていると、退職金について相談を受けることがあります。

その中で、退職する従業員の方が事業主に対して「こんなにいただけるとは思いませんでした! ありがとうございます!」と驚き、強い感謝を示していた、という話を聞くことは珍しくありません。

その話を聞くたびに、一つの疑問が残ります。明日から会社に来ない人に、そこまで感謝されることに、制度としてどれほどの意味があるのだろうか、という点です。

退職金は、退職の瞬間に驚きや感動を与えるための制度ではありません。本来は、在職中の判断や行動に影響を与えることを前提として設計される制度です。

しかし実務上、多くの会社では退職金規程が入社時に説明されず、在職中に意識されることもあまりありません。その結果、退職時に初めて規程を読み、金額を知ることになります。これでは、制度を通じて会社が何を大切にしているのかを伝えることは難しいでしょう。

以前、経営者の方に、毎朝理念を唱和するくらいなら退職金規程を読み合わせた方がよいのではないでしょうか、と少し皮肉を込めて話したことがあります。理念は言葉で語られます。しかし、従業員が日々受け取っている会社の考え方は、評価や賃金、そして制度の中に表れるものです。

退職の時点で振り返るのではなく、在職中にどのように理解され、どのように機能しているのか。退職金は、その視点から見直してみてもよいのではないかと思います。